センサリー・モーター・アムネジア(SMA)による4つの身体パターンと脳の再教育の進め方

2020.05.15

<お知らせ>
慢性疼痛や筋緊張にアプローチするソマティクス(ソマティック・エクササイズ)のグループレッスンをオンラインで始めます。ご希望の方はこちらのページをご覧の上、お申込みフォームよりご連絡ください。

***

ここからは本題です。

センサリー・モーター・アムネジア(SMA/感覚運動健忘)とは、ストレスやトラウマに対し、筋肉が反射的(無意識的)に収縮し続けた結果、意識的に緩めることができなくなっている状態をさします。SMAは慢性疼痛の原因にもなります。(詳しくはこちらへ)

センサリー・モーター・アムネジアのパターンは大きく分けて以下の4つがあり、姿勢に影響が現れます。

 

センサリー・モーター・アムネジア(SMA)による4つの身体パターン

①赤信号反射

主にお腹側の筋肉(腹直筋と腹斜筋)が収縮している状態で、猫背と呼ばれる前かがみの姿勢です。不安や恐怖をはじめとしたネガティブなストレスに対する逃避反応とソマティクスでは考えます。

 

②青信号反射

主に背中側の筋肉(脊柱起立筋)がを収縮している状態です。反り腰の姿勢で、腰痛と関連があります。ポジティブなストレスに対する反応で、「もっとがんばらねば」という心理状態と関連があるとソマティクスでは考えます。

 

③トラウマ反射

主に脇の筋肉(腹斜筋、腰方形筋)が収縮している状態です。ソマティクスにおける「トラウマ」は、主に身体的トラウマを指します。具体的には、手術や事故、怪我などです。手術や事故、怪我により外傷部分ができると、その周囲の筋肉が外傷部分を守ろうとして収縮します。その結果姿勢が片方のサイドへ崩れます。

④老人姿勢
赤信号反射と青信号反射が両方あり、お腹側と背中側の筋肉がお互いに引っ張り合っている状態です。お互いに引っ張り合うことで体幹全体が締め付けられ、呼吸や血圧にも影響が出ます。慢性痛、慢性疲労と関連があります。長年のストレスの蓄積が原因となります。

上記①〜④は大きな目安であり、実際にはそれぞれの要素がミックスされていることが少なくありません。

 

センサリー・モーター・アムネジア(SMA)はこのように広がっていきます

上記①〜④の姿勢パターンにおいて、腹直筋、腹斜筋、脊柱起立筋、腰方形筋にセンサリー・モーター・アムネジアが生じるとお伝えしました。しかし、センサリー・モーター・アムネジア(SMA)の影響はこの部分のみに留まる訳ではありません。身体の持つ「全体性を保つ」という性質により、以下の2つの方向性で広がっていきます。その結果、システムは非効率となり、エネルギーを消耗するようになります。

Ⅰ. 身体の重心部(ソマティック・センター)から末梢へ

ソマティックセンターとは、身体の重心部である胸郭から骨盤の間の立体部分をさします。
この部分にセンサリー・モーター・アムネジア(SMA)による収縮があると重心は崩れます。この重心が崩れた状態で身体がバランスを取ろうとた結果、末梢にも収縮が生じ、習慣化することで新たなセンサリー・モーター・アムネジア(SMA)が生まれます。例えば、ソマティックセンターである腹部のセンサリー・モーター・アムネジア(SMA)の影響により首の側面にある肩甲挙筋にもセンサリー・モーター・アムネジア(SMA)が生じる、背中側の脊柱起立筋のセンサリー・モーター・アムネジア(SMA)によりふくらはぎにもセンサリー・モーター・アムネジア(SMA)が生じる、などが一例です。

 

Ⅱ.末梢から身体の重心部(ソマティックセンター)へ

トラウマ反射の箇所で説明しましたように、怪我や手術などにより末梢部分に外傷が生じると、関連する他の部分は自動的にに末梢の外傷を守ろうとして収縮します。その影響は重心部であるソマティックセンターにも及び、新たなセンサリー・モーター・アムネジア(SMA)が生じます。外傷部分が身体の前面にあるのか、後面にあるのかにより、赤信号反射かに青信号反射を強めるという影響もあります。

このように、センサリー・モーター・アムネジア(SMA)は中心から末梢へ、そして末梢から中心へとお互いに影響を与えながら広がっていきます。

 

脳の再教育でセンサリー・モーター・アムネジア(SMA)を改善する

センサリー・モーター・アムネジア(SMA)を改善するために、バンディキュレーションという脳の再教育を行います(詳しくはこちらへ)。バンディキュレーションは全部で8種類あります。レッスン1から4までは重心部であるソマティックセンターへのアプローチです。レッスン5、6は末梢部である脚、腕、首に、レッスン7、8はSMAの影響を受けやすい呼吸と歩行の機能にアプローチします。

<ソマティックセンターへのアプローチ>
Lesson1:背中の伸筋のコントロール(青信号反射)
Lesson2:腹部の屈筋のコントロール(赤信号反射)
Lesson3:ウエストの筋肉のコントロール(トラウマ反射)

<末梢部へのアプローチ>
Lesson4:体幹を回転させる筋肉のコントロール
Lesson5:股関節と足の筋肉のコントロール
Lesson6:首と肩の筋肉のコントロール

<呼吸法>
Lesson7:呼吸法

<ウォーキング>
Lesson8:ウォーキング

【番外編】
キャットストレッチ

上記の通り、センサリー・モーター・アムネジア(SMA)には全身へと広がっていく性質がありますが、特にセンサリー・モーター・アムネジア(SMA)の影響を受けやすいのはソマティックセンターです。主訴が末梢部分であっても、末梢のみにバンディキュレーションを行うのではなく、ソマティックセンターへのバンディキュレーションも含めて行っていくことが大切になります。

レッスンの進め方

1レッスンは50〜60分前後です。プラクティショナーのガイドに従って、ターゲットの筋肉を感じながら動かしていきます。バンディキュレーションは、主に床の上で横になった状態で行いますが、一部椅子に座って行えるものもあります。脳の感覚運動領域に変化を起こすことが目的のエクササイズですので、身体をただ動かすのではなく、意識をターゲットの筋肉に保ちながら動かす練習をすることが大切です。最初のうちは気づくと意識が彷徨い、ターゲットの筋肉から離れ、全く関係のないことを考えてしまうことがありますが、繰り返し練習をすることで、意識を目的に定めやすくなります。意識を定めながらゆっくりと動かすことができるということは、脳の皮質を使えるということであり、そうなることで意識的に筋肉を緩められるようになっていきます。

セルフエクササイズ

ソマティクスの効果は累積的に現れるため、バンディキュレーションは繰り返すことが大切です。「キャットストレッチ」は、ソマティクスのエッセンスの短縮版で、1回10分〜15分程度でざっくりと全身のセンサリー・モーター・アムネジアにアプローチできるセルフエクササイズです。レッスンとレッスンの合間に自宅でキャットストレッチを行うことが推奨されています。最終的には、レッスンに参加しなくても自分で自分の身体をケアしていけるようになることがソマティクスの最終目標です。

 

カテゴリー: ソマティック・ムーブメント

Nature Flowでは、神経生理学や成人の発達理論に基づいたセッションを対面、オンラインで行っています。身体と意識にアプローチすることを通じて、「今」を生きることを応援しています。

カウンセリング詳細&お申し込み




コメントは受け付けていません。



PAGE TOP



RSS



Copyrights © Nature Flow All Rights Reserved.