言葉にならないトラウマの解放:潜在記憶とアート
2013.01.12
先日、ソマティック・エクスペリエンス(SE)のトレーニングでご一緒していたボディワーカーの方が開催された勉強会に参加してきました。SEの創始者であるピーター・リヴァインがアメリカで開催したワークショップに参加され、その内容をシェアしてくださったのです。
テーマは、「言葉として語られない記憶(トラウマ)へのアプローチ」です。
「記憶」には二つの種類があります。
ひとつは、事実やストーリ-などを扱う「顕在記憶」です。通常、私達が使う「記憶」という言葉は、こちらに当てはまります。
もうひとつは、「潜在記憶(手続き記憶)」です。なかなか言語化できない、無意識的で条件づけられた記憶です。(なかなか言語化できないということは、セラピーの場においても表現することが難しいということです。)
今回のアプローチは、二つ目の「なかなか言語化されない記憶(トラウマ)」を対象としています。
セッションには、アートを使います。画用紙に、与えられたテーマについてクレヨンで絵を描いていきます。利き手ではない方の手で書いていくことがポイントです。(おそらく、自我の関与を低くするのが目的だと思います。)
ここからがSEらしさ全開のところです。
本人が、その絵を「体の動き」で表現していきます。そして、セラピストはその動きを真似ていきます。本人が「もう終わりにしていい」と感じたところで、動きを止め、終了です。
体験した私の個人的な印象です。
まず、絵を描いている時に、妙に体が熱を発し、吐き気を催しました。生理的な解放が起きていたのだと思いますが、表面的な感情や意図とは異なるところで起きている、そんな印象がありました。
そして、これはオブザーブしてくれていた仲間が気づいてくれたのですが、私の動きと会場の隣の部屋のピアノの音がずっとシンクロしていたようです。
ワークの全てが終わった後に改めて自分が描いた絵を見てみたら、意図して描いた意味とは全く異なる、元型的な絵にも見えることに気付きました。(女性性に関わるような内容です。)
思いがけず自分の深いところがあらわになってしまったような、ちょっとした気恥ずかしさもありましたが、何かが大きく自分の中でシフトしたことは確かに感じています。(このあたり、非言語を扱っている以上、言語での説明に限界があるのがもどかしいところなのですが・・。)
そして、セラピスト役を通して印象に残ったのは、クライアントさんの動きを真似し、身体レベルでプロセスを共にすることで、セラピスト側にも何かシフトのようなものが起きるということです。アートを鑑賞した時に、自分の中の何かが大きくシフトしたことがこれまで何度かあったのですが、それに似た感覚でした。
アートには潜在記憶にアクセスする力があり、その潜在記憶にアクセスする、ということは、文字通り、意識や見た目の境界を超えた規模の大きいシフトを引き起こす可能性を秘めているのかもしれない、そんなことを感じました。
潜在記憶とアート、深めてみたいテーマのひとつです。
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