フォーカシングとは
updated:2026.05.15

「なんとなくモヤモヤする」「うまく言葉にできない感覚がある」——そのぼんやりとした感覚こそが、変化の入り口です。
フォーカシングは、1960年代にシカゴ大学の哲学者・心理学者であるユージン・ジェンドリンによって開発された、内側への気づきのプロセスです。カウンセリングの研究の中で、「変化を遂げるクライアントは何が違うのか」を探求した結果、生まれました。
体の中にある「フェルトセンス」
フォーカシングでは、フェルトセンス(felt sense)と呼ばれる、体の内側に生じるぼんやりとした感覚・感じに、ゆっくりと注意を向けていきます。
たとえば、ある問題について考えたとき、胸のあたりに重さを感じたり、お腹がざわざわしたりすることがあります。それはまだ言葉になっていないけれど、確かにそこにある「何か」です。フォーカシングでは、その「何か」に急いで名前をつけようとするのではなく、そっと寄り添いながら、それが自分から語りかけてくるのを待ちます。
体験過程——「次」をすでに含んでいる感覚
ジェンドリンは、私たちの体験は常に「次のステップ」をすでに内側に含んでいると考えました。これを体験過程(Experiencing)と呼びます。
川の水が流れるように、体験はそれ自体が前へと動こうとする力を持っています。ところが、つらい経験や繰り返す悩みのときには、その流れが止まってしまっていることがあります。
フォーカシングでは、体のフェルトセンスに丁寧に関わることで、止まっていた体験過程が再び動き始める瞬間を体験することができます。その瞬間には、「ああ、そういうことか」という身体的な解放感——フェルト・シフト——が自然と訪れます。これは頭で理解するのではなく、体全体でわかる感覚です。
アート表現を取り入れたフォーカシング
当セッションでは、フォーカシングのプロセスにアート表現(絵・色・形・コラージュなど)を部分的に取り入れた関わり方もご提供しています。これはローリー・ラパポートが探求した、フォーカシングとアート表現を橋渡しするアプローチからインスピレーションを得ています。
フェルトセンスは、言葉よりも先に色や形として現れてくることがあります。「うまく描けるかどうか」は関係ありません。絵の上手さではなく、内側の感覚が手を通して外に出てくるプロセスそのものに意味があります。
たとえば——
- フェルトセンスを感じながら、ただ色を選んで紙の上に置いてみる
- 「この感じは、どんな形をしているだろう?」と手を動かしてみる
- 描いたものをそっと眺め、また体の内側に戻って感じてみる
このように、言葉とアート表現を行き来することで、言葉だけでは届かなかった内側の層に触れることができます。言語化が苦手な方、言葉にすると感覚が逃げてしまうと感じる方にとって、特に有効なアプローチです。
また、アート表現によって外側に「形」が生まれることで、自分の内側の世界を少し距離を置いて眺めることができます。これにより、それまで気づかなかった視点や、新たな意味が自然と浮かび上がってくることがあります。
ソマティック・エクスペリエンシングとの違い
フォーカシングとよく比較されるのが、ピーター・リヴァインが開発したソマティック・エクスペリエンシング(SE)です。どちらも「体の感覚」を大切にしますが、アプローチの焦点が異なります。
フォーカシングは、体の内側にあるぼんやりとした感覚(フェルトセンス)に言葉やイメージを見つけながら、「意味の展開」を促すプロセスです。日常の悩み・人間関係・創造性・自己理解など、幅広いテーマに取り組むことができます。
ソマティック・エクスペリエンシングは、神経系の生理的な覚醒・緊張・解放に働きかけ、トラウマによる神経系の固着を少しずつ解放していくアプローチです。特にトラウマ・PTSD・慢性的な身体症状に取り組む方に向いています。
簡単に言えば、SEが「体の安全を回復する」ことを主軸とするのに対し、フォーカシングは「体の中にある意味に耳を傾ける」プロセスです。両者は補い合う関係にあり、組み合わせて活用されることもあります。
簡単に言えば、SEが「体の安全を回復する」ことを主軸とするのに対し、フォーカシングは「体の中にある意味に耳を傾ける」プロセスです。両者は補い合う関係にあり、組み合わせて活用されることもあります。
こんな方に
- 気持ちを言葉にするのが難しいと感じている方
- 言葉よりも、感覚やイメージで物事を感じ取ることが多い方
- 頭ではわかっているのに、変われない自分がいる方
- 繰り返し同じパターンに悩む方
- 自分の内側をもっと深く理解したい方
- カウンセリングや自己探求をより深めたい方
フォーカシングは、答えを外に探すのではなく、あなた自身の内側に、すでにある「次の一歩」を見つけるプロセスです。アート表現はその旅において、言葉を超えた「もう一つの言語」となります。