インナーチャイルドという名のトリックスター

2017.03.17

私達の中には、多かれ少なかれ「癒やされずに子どものままでいる自分」がいます。その子どもは、時に違和感や心身の症状、関係性の不和という形になって現れ、私達の足を止め、注意を引こうとします。その存在は「インナーチャイルド」と呼ばれ、様々なセラピーやヒーリングでワークする対象にもなります。

インナーチャイルドの悲しみや傷つきの深さ、また訴えの大きさゆえ、大人の自分が戸惑い、途方に暮れることもしばしばです。しかし逆説的ですが、その子どもこそが解決や変容のキーパーソンでもあるとして、その存在に耳を傾け、尊重することを多くのセラピーが重視しています。私達を困惑させながらも次のステージへと導いていく。インナーチャイルドは、全く異なる二面性を併せ持つ、神話の中のトリックスターのような存在です。

 

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私が久しぶりに自分のチャイルドと向き合うことになったのは、昨年末に開催された臨床瞑想法のワークショップに参加した時です。臨床瞑想法は、飛騨千光寺の住職で高野山傳燈大阿闍梨である大下大圓先生が開発した、瞑想による自己回復メソッドです。臨床瞑想法の第一段階では、生育歴を観察すると共に他者の視点からも洞察すること、そして大人の自分がインナーチャイルドをケアし、自己との和解を試みること、この二点を瞑想の中で行います。

「久しぶりにトラウマとは関係のないことをしよう!」と思って申し込んだ臨床瞑想法のワークショップ。事前に送られてきた課題に「当日までに生育歴でのトラウマを整理しておいて下さい」と書かれているのを見て、「瞑想でもトラウマか(;^ω^)」と若干食傷気味での参加ではあったのですが、ただ知識を得るだけではない、自分の内側から起きる気づきがありました。

特に感じたのは、「他者の視点からの洞察」を通じて、生育歴のストーリーが一部書き換えられた感覚があったこと、そして、「自分の中での和解」が進むことで得られる、独特な安心感や腑に落ちる感覚があったということです。

10年前頃に流行った、ハワイの伝承医療である「ホ・オポノポノ」を憶えていますか?「ホ・オポノポノ」でも、「大人の自分」と「子どもの自分」の和解が「回復の鍵」であるとしています。大人の自分が「感謝や謝罪」を通じて子どもの自分と出会うことによってのみ、問題の原因となっている記憶を浄化することができる。子どもの自分を通さずして、浄化や変容は起き得ないとする理論です。10年前の私は、「子どもの自分に向かって4つの言葉を言うだけでいい」「信じていなくても効果がある」といった斬新な謳い文句にばかり目が向いていましたが、今回改めてホ・オポノポノの浄化のシステムを確認した際、理論のこの部分にとても深遠なものを感じました。私達を悩ませ、戸惑わせるチャイルドこそが、解決や浄化の唯一の鍵でもあるという、この二面性。まさにトリックスターのような生命力と可能性を感じます。

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私達はついつい、問題の解決を外側の事象に求めてしまいます。満たされない思いを埋めてくれる誰かを探したり、最新のセラピーにドラマチックな変化を期待したり。 どうにもならない苦しみの中で、宇宙や神やなど、自分から遠く離れた存在に助けを求めたくなる。そんな時もありますね。

そういった、「他者に助けを求める」というスタンスが、「間違っている」という訳ではもちろんありません。実際に、神経系の調和を考える際も、「他者との繋がり」「社会性を司る神経系」は回復のキーワードとなります。セラピストなど他者との二者関係を介してのみ得られることがあるのも事実です。

その一方で、他の誰でもない「大人の自分自身」が直接子どもの自分にコミットすることでのみ進むプロセスがあることもまた、真実のように感じます。(ふと思ったのですが、自己内のワークであったとしても、「チャイルド」を一人の人格として尊重し、耳を傾けることで、繋がりの神経が引き出されているのかもしれません。結果的に神経系にもワークしているのかもしれませんね)

 

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最近の私は、緊張したり負荷を感じる場面があると、このチャイルドに「どう思う?」「どうしたい?」と改めて声をかけるようにしています。初めてインナーチャイルドワークを受けた10数年前には、お互いに戸惑い、言葉少ななお見合い状態だったのですが、今のチャイルドは多くの言葉を使って大人の私に思いを投げかけてきます。時にはするどいツッコミにタジタジになることも(;^ω^)「向かい合っている」というよりも、同じ方向に一緒に進む同志のような関係になりつつあるのかもしれません。他者との関係性同様、自分との関係性も育っていくのですね。

“神経系”という視点は今後も重視しつつも、お越しになる方が自分のチャイルドと出会い、安全な距離からゆっくりと近づき、尊重しながら関係を構築していく。セッションの中でそのお手伝いをすることも忘れずにいたい。そんなことを改めて感じる今日この頃です。

 

カテゴリー: インナーチャイルド, 臨床瞑想法

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