“親密な関係”のトラウマ:アタッチメント(愛着)理論とトラウマへの影響

2013.07.15

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親密な人間関係を築けない、というテーマで悩み、カウンセリングやセラピーを開始する方は少なくありません。長期的で安定した関係を築くのが難しい、わかっているのに危険な関係を繰り返してしまう、相手が安全な人物と分かっていても恐怖心が先立ち、相手から離れてしまう、相手への愛情は感じるものの、同時に憎しみも感じ、混乱した言動になってしまう、など、親密な関係性にまつわるパターンは様々です。

私達が築く「親密な関係」は、どのようなことが基礎になり、成り立っているのでしょうか。また、安定した豊かな関係を築くためのヒントはどこに
あるのでしょうか。

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対人関係の基礎となる<アタッチメント(愛着)>とは?

アタッチメント(愛着)とは、他者との間に親密さや繋がりを求め、そこから安心を得ようとする人間の傾向のことを指します。幼児が、泣いたり笑ったりすることで愛着の対象となる養育者の注意を自分に引き寄せ、安心を得ようとする行動を<愛着行動>と言います。愛着行動は、生後6ヶ月以降から明確に現れはじめ、発達の時期に応じて、その行動様式や意味は変化していきます。

子供の愛着行動に対し、養育者がどのような反応をするかは、子供が社会的、情緒的に健全な発達を遂げる上で、とても重要な要素になります。養育者が乳幼児の欲求に適切に応じることができると、子供の中に“安全”という感覚を確立することができます。その感覚を基地として、子供は周囲の環境を探索し、自分の世界を広げていくことができるようになります。

養育者の反応は、、子供の「自分は他者に愛される存在なのか」そして「他者や外の世界は、はたして自分の求めに応じてくれるのか」という自分自身と他者に対する<物事を捉える枠組み>の形成にも影響を与えます。この<物事を捉える枠組み>は、養育者との関係を超え、その後の対人関係にも影響を与えていきます。つまり、子供と養育者との間に築いた初期の関係は、生涯を通じた<人との関係性>に影響を与え得るということです。

アタッチメントの4つの特徴

アタッチメントの理論を確立した、心理学者であり精神分析学者でもあるジョン・ボウルビィ(John Bowlby)は、アタッチメントには4つの特徴があると考えました。

・safe haven(安全な避難場所)
恐怖や脅威に直面した際に、安心や快適さを得るために養育者のところへ戻ること。

・secure base(安全基地)
養育者が安全で頼りになる“基地”としての役割を果たし、その基地から、子供は周囲の環境を探索することができること

・proximity maintenance(近接性の維持)
養育者の側にいたいという子供の欲求

・separation distress(別れの苦しみ)
養育者が不在の時に子供が感じる不安

これらの4つの要素が養育者によって健全にケアされることで、子供は安定したアタッチメントを獲得することができると考えられています。

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子供のアタッチメントのパターン

心理学者のメアリー・エインスワース(Mary Ainthworth)やメアリー・メイン(Mary Main)らの研究によって、子供の愛着行動のスタイルには以下の4つのパターンがあると考えられるようになりました。

①安定型
養育者と離れることに混乱を示すが、養育者が戻ってくると落ち着くことができる。

②不安型(アンビバレント型)
養育者と離れることに混乱を示し、養育者が戻ってきてもネガティブな感情を引きずる。

③回避型
養育者と離れることに混乱を示さず、距離をおく傾向がある。

④混乱型
愛着行動に抵抗や回避が混ざっている。ぼーっとしていたり、養育者がいるところで混乱や不安を示す。

全体の3分の2は安定型のアタッチメントスタイルを示し、残りの3分の1は不安定型(不安型、回避型、混乱型)を示すと言われています。

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“大人のアタッチメントと恋愛”への適用

社会心理学者のCindy HazanとPhilip Shaverは、<子供と養育者の相互作用>と<大人の恋人同士の相互作用>に類似性があることに気づきます。 このことがきっかけとなり、1960年~1970年代にかけて発展した子供の愛着理論は、1980年代に入り、<大人のアタッチメントと恋愛>というテーマへとその研究範囲を広げて行きます。

大人のアタッチメントの4つのパターン

大人のアタッチメントスタイルには以下の4つのパターンがあると考えられています。「不安」と「回避」という2つキーワードが、特徴的な軸になります。

①自律・安定型
他者と近い関係になることが比較的たやすく、誰かを頼りにすること、誰かに頼りにされることに心地よさを感じる。

②とらわれ型(不安・アンビバレント型)
パートナーに非常に高い親密性や承認、応答性を求め、パートナーが自分と同じようには望んでいないことに不安を感じる。

③拒絶・回避型(愛着軽視型)
自立や自己充足が重要であり、だれかに依存したり、依存させることは好まない。感情を抑え隠す傾向があり、拒絶することで相手と自分の距離を保とうとする。

④恐れ・回避型(未解決型)
近い関係を求めているものの、近くなりすぎたら傷つけられるのではないかという不安があり、相手を完全に信頼したり、依存することが難しい。

成人を対象とした愛着に関する調査の結果、幼少期に構築したアタッチメントスタイルと、20歳時のアタッチメントスタイルが一致している人は、全体の3分の2に当たることが明らかになっています。逆に言えば、3分の1の人は、子供時代に構築したアタッチメントスタイルとは異なるスタイルを、発達のプロセスの中で身につけている、ということです。
子どものアタッチメントスタイルと大人のアタッチメントスタイルは、概して以下のように対応しています。

<子ども>                  <大人>
安定型               →  自律・安定型
不安型(アンビバレント型)    →  とらわれ型(不安・アンビバレント型) 

回避型               →  拒絶・回避型(愛着軽視型)
混乱型               →  恐れ・回避型

以上のように、幼少期に構築したアタッチメントスタイルは、人生に渡って影響を及ぼしうる、対人関係構築上のキーワードのひとつと言うことができます。しかし、上記の通り、幼少期のアタッチメントスタイルと成人後のそれは一致する確立は高いものの、必ずしも固定的なものではなく、安定型が不安定型に変化する可能性も、逆に不安定型が安定型に変化する可能性も秘めています。

また、アタッチメントは人との繋がりの全てを支配するキーワードではありません。今のところ明らかになっているのは、<親密な関係における安全、安心感>や、<生き残りのための、比較的原初的な関係性>のキーワードであるということです。関係性の他の要素、例えば、他者と共同作業をする、何かをシェアし合うといったといった、<共に生きていくための関係性>までもをアタッチメントが完全に支配しているという訳ではありません。また、アタッチメントが影響を及ぼす関係、例えば親子関係においてはも、アタッチメントのみが機能しているのではなく、上記の<共に生きていくための関係性>も同時に機能しています。つまり、一つの関係性において、様々な機能が並行して存在しているということです。

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アタッチメントに対するセラピー

アタッチメントにアプローチするセラピーには、様々な視点に基づいたものがあります。システム論に基づいた「相互作用ガイダンス」や「Circle of Security」などが一例です。ソマティック・エクスペリエンスでは、不安定なアタッチメントを「関係性のトラウマ」と捉え、アタッチメントの4つの特徴(safe haven(安全な避難場所)、secure base(安全基地)、proximity maintenance(近接性の維持)、separation distress(別れの苦しみ)をテーマとして扱いつつ、タッチも用いてアプローチをしていきます。

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nature-flowでは、自己探索に必要な「安全」や「静けさ」、「ユーモア」や「柔らかさ」を大切にしています。そして、「症状をなくす」ことだけに注力するのではなく、その方固有の個性や本質(true nature)を活かした生き方の探索に寄り添うことを大切にしていきたい、そんな風に思っています。

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